Title1 : 出会い (唐田えりか)

愛してはいけないと、はじめからわかっていた。

でも、全てを失うという未来がわかっていたとして
彼に恋に落ちない道は、あったのだろうか?

 

寝ても覚めても

 

 

19歳の夏、彼に出会った。

 

女優としてはじめてつかんだ大きなチャンス。
オーディションに落ちる度、
私には無理じゃないかと何度も涙を流した。

 

映画の初主演。
絶対に、結果を残さなくてはと、
大きな期待と不安を抱えて初めての現場にいくと

初対面の彼は、大きく温かい手で私の手を握り、
くしゃっとした笑顔で「よろしく」と言ってくれた。

 

大人の男の人がくしゃっと笑う姿を
はじめてみた。

 

 

 

わたし達は、不思議と空気感が合った。

たぶん、最初から。

何気ない会話のテンポが合うのだ。

 

だから、演技も最初からしっくりときていたし、
初めての主演は難しいことも多かったけど、

 

彼がリードしてくれ、
彼を信じて、自分を出していくことができた。

 

わたしの力を引き出してくれる演技の先輩に出会えて、
わたしは幸せだと思った。

 

 


撮影の合間の時間では、少しずつ色んな話をした。

彼は意外にもたくさん冗談を言うひとで、
わたしは、その一つ一つがツボに入り
毎日ケラケラと笑っていた。

 

普段は人見知りな部分もあるわたしだか、彼を通して、
現場の皆と打ち解けることができた。

 

 


ある日の撮影から、わたしは趣味のフィルムカメラを持参し、
合間に、わたしの愛する現場の風景を撮るようになった。

 

現像した写真は皆から好評で、
監督からもを感性ほめてもらえた。

 

彼も気に入ってくれ、わたしは彼のことも何枚も撮った。

 

彼はモデルの経験もあるためかとても良い被写体で、
お気に入りの写真はinstagramへアップした。

 

 
また、ある日の撮影で
彼の冗談に思わず、「なに言ってるん!」と
タメ口でつっこんでしまった。


はっと、謝ろうとするわたしに
彼は「今日から、敬語は禁止ね」と微笑んだ。

 

呼び方も「でっくん」と彼とわたしの間だけの愛称で
呼ぶことになった。

 

 新人で10も歳が下の私に対し、対等に関係を
築こうとしてくれるのが嬉しかった。

 

 

 

 

 

東出昌大 唐田えりか 不倫 Story)