Title2: 寝ても覚めても(唐田えりか)
撮影は順調に進んでいった。
わたしには全てが初めての体験で、全て吸収したいと必死だった。
人生で一番濃い時間が流れていた。
わたしと彼との関係性も時間とともにより濃いものに
なっていった。
わたしはどんどん「朝子」になっていったし、朝子はまるで私だった。
「麦」と「亮平」をわたしは朝子として深く愛した。
撮影が終わり家に帰っても、寝ても覚めてものことで頭がいっぱいで、
寝ていても、夢の中で寝ても覚めてもが続いているような感覚だった。
撮休でも、わたしは朝子を放したくなかった。
そんな想いが伝わったのだろうか、彼から
「一緒に台本読みをしよう」と誘ってくれた。
貴重な休みにご家族との時間は大丈夫かという心配が
一瞬頭をよぎったが、
彼も今は撮影に没頭したいのかもしれないし、
何より彼から演技を勉強させてもらいたかったので
誘いを受けることにした。
撮休当日は、初めての二人きりだったが、
驚くほど自然体でいられた。
わたし達のためだけに鍵を開けてもらった稽古場で多く時間を過ごし
ランチがてら近くの公園を二人で散歩をするなどして過ごした。
不思議と会話は途切れず
もちろん、本読みもとても有意義なものだった。
撮影は大詰めに入り、
残す日程はあと2週間というところになった。
わたしにとって、この撮影の日々は素晴らしく充実していて、
ずっとずっと続いてほしいと
願わずにはいられなかった。
そして、同時に自覚してしまった。
わたしは「麦」と「亮平」だけでなく
「でっくん」を愛してしまっていると。